クラシックス

こころ

夏目漱石の『こころ』を上・中・下の中まで読んだ。 人間は未熟で軽薄な生き物だと言ってしまうことすら未熟で軽薄だと感じる。 中での、父と先生の重ね方や遅延から生まれる緊迫感から、漱石はうまいのだと改めて感じた。

夜明け前

藤村の『夜明け前』のダイジェス版を読み始めた。 なんでも読んでみるもの、経験してみるもので、 思っていたより読み応えがあって、自分の浅はかさが恥ずかしい。 当時は、こんな社会だったんだということが知れて、 街道の行き来から、多くのことがわかる。…

婦系図

泉鏡花を読んだのは初めてだったと思う。 小説は、描写に意外性があると面白く思える。 物・事、名詞をどう形容するのか、世界をどう見ているのかは、 人によって違っていて、 その世界が言葉で立ち現れてくると楽しい。

鷗外の「舞姫」

角川文庫のビギナーズ・クラシックス近代文学編の1冊、 『鷗外の「舞姫」』を読んだ。 在庫もなく、再版予定もないようなので、アマゾンで中古を購入した。 官僚制や国家、組織の縛り、「和を以て貴しと為す」感じの日本像は、今もある。 豊太郎は、苦しん…

南総里見八犬伝

『南総里見八犬伝』には、 儒教・仏教・道教的世界観が混在。 完結までに28年、 分量は106冊(『源氏物語』の二倍以上)で、 馬琴が下書きし、絵師が仕上げた挿絵もあるらしい。 荒唐無稽だと批判されることもある『南総里見八犬伝』だが、 理屈も筋もあって…

西行

伊勢や熊野、天皇や神道絡みの話になると難しかった。 西行には、和歌ではあまり読まれない「虹」を読んだ歌もあるようだ。 そう言えば、「星」も日本古典ではあまり見かけないが、どうだろう。 院政と男色についても少し触れられていた。

蒙求

『蒙求(もうぎゅう)』は、 平安時代に日本に伝わった中国の故事集らしい。 子供の初学用・暗誦用として李瀚(りかん、713-766)が編集したもの。 四字句の韻文で596句から成る。 一つの故事が四字ずつにまとめられ、対句にして並べられているが、 短すぎて…

良寛

カフカ『変身』やジョイスの『ユリシーズ』に関する章段も読み、 ナボコフ『ヨーロッパ文学講義』を読了。 講義の中で取り上げられている作品をもう一度読んで、再び読みたい。 おとぎ話として、『変身』や『ユリシーズ』を楽しんだり、 創作の苦労や工夫に…

白楽天

政治家として人民を「兼(広く)く済(すく)う」ことを意識した詩、 プライベートの充実「独(ひと)り善(よ)し」を大切にした詩、 その両方を詠んだのが白楽天(白居易)という人らしい。 下定雅弘氏の 詩の形式と内容についてのコラム(p120-122)ほか…

老子・荘子

足ることを知り、 万物を区別せず、 善悪の外に遊ぶ。 今から2000年以上も前にいた諸子百家の思想を読んでいると、 もう考える必要はなく、ただ実践するのみという気がしてくる。 結論はすでにあるのだから、 悩んだり、苦しんだりすることが、ばかばかしく…

論語

残されているものによって、 2500年程前にも遡って、その考えを読み、知ることができるのは不思議だと思う。 第二部を読み始めて印象的だったのは、加地伸行さんの解説(p142) 「この祖先供養は本来儒教的なものであり、インド仏教にはありません。」 「つ…

堤中納言物語

収録は短編10話: 「花桜折る中将」「このついで」「虫めづる姫君」「ほどほどの懸想」 「逢坂越えぬ権中納言」「貝合せ」「思はぬ方に泊まりする少将」 「花々のをんな子」「はい墨」「よしなしごと」 と断章。 虫好きの女の子の話と 綺麗な貝の競い合いの…

古事記

現代語訳と書き下し文と寸評を通して、『古事記』の一部を読んだ。 違う時代、世界、価値観があると知るのは、気晴らしになる。 日本語を漢字で表した太安万侶の苦労に感心する。 写本を読める人にも感心する。 ヤマトタケルノミコト(倭建命、『日本書紀』…

平家物語

斬首や首実検、 引き回しや自害などが連続して語られると、 滅入ってくる。 和歌や笛、弓の名手の話、 親子の愛や妻子への愛も 所々にあるが、 別の人生もあっただろうにと苦しくなる。 日本の広い範囲が戦場となり、人が亡くなった。 殺し合いの末に天下を…

『太平記』後半

相変わらずたくさんの人が出てきて、 いろいろなことが起こるので、 整理ができないまま、 なんとなく読了。 印象に残っていることは、 例えば、 巻21:高師直(こうのもろなお)が塩谷高貞(えんやたかさだ)の妻に宛てる恋文を兼好に代筆させた話と塩谷一…

太平記

全40巻あるうちの一部を読んでいる。 次は14巻目。 13巻では、 大塔宮(おおとうのみや)の非業の死、 高氏から尊氏への改名 などの話が出てきた。 大塔宮は、後醍醐天皇の息子で、 護良親王(もりよししんのう)。 たくさんの人が登場しては、 自害や斬首で…

十八史略

角川の初心者向け『十八史略』では、 聖王(黄帝、尭、舜、禹)、暴君(桀王、湯王、紂王、武王、幽王)、宋・斉(せい)・魯・田氏斉の興亡、始皇帝についての記述が紹介されていた。 李斯(りし)や韓非子、始皇帝の長男扶蘇(ふそ)。 李斯は篆書も上手、…

春秋左氏伝

歴史書、中でも政治史は、 争い事が絶えない。 殺したり、殺されたりが多い。 また、中国の記録には、 道家をはじめ、断固として権力に靡かない、餓死も辞さない人が登場する。 「春秋」は、記録の羅列。 紀元前722-481、 隠公から哀公まで12人の君主、 242…

謡曲・狂言

隅田川のお話が印象に残った。 亡くなった子供を実際に登場させず、声も出さず、地謡が代わりに謡う演出とそうでないものを比べて観てみたいとも思った。 末広かりも面白かった。 大きなお使いミスが、深刻にならないのが愉快。 現代なら、詐欺罪で裁判沙汰…

梁塵秘抄

後白河院(1127-1192)が、どうしてそんなに今様(平安時代後期に流行した歌謡)に耽溺したのか。 「梁塵秘抄」の一部を読んだだけではわからなかった。 ただ、カタツムリの歌やこま回しの歌、ちょっと可笑しみのある歌は楽しかった。 子供の頃、でんでん虫…

中庸

『中庸』も、『礼記』の一篇。 読み始めたところで、気になることを少しだけメモして、整理。 「慎独(独りを慎む)」は、修養方法の一つ。 自分自身と向き合い、自分を大切にし、自分の心に芽生えた悪を摘むことのよう。 中国思想では、心の動きを「情」と…

大学

『大学』は、『礼記』の一節。 以下は、 その体系である三綱領(止至善・明明徳・新民)と 八条目(格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下)。 目標に達するために大切な手順は「本末」といい、 まず始めにすべき本質的な事である「本」が「明明…

貞観政要

唐の歴史家呉兢(ごきょう)編纂の 『貞観政要(じょうがんせいよう)』は、 太宗李世民(598-649)と臣下たちの問答で、 全10巻40篇で、問答数は約280条。 私が読むのは、その内のごく一部、47条の抄訳。 太宗李世民は、 王羲之の書を愛して蒐集した人、と…

変遷

角川ソフィア文庫の『近松門左衛門』をやっと読み終えた。 作中、何かのために死ぬ人が多いが、それは社会問題になって、禁じられたりして、現在がある。 唐突で荒唐無稽な印象も多々受けたが、当て込みを知ったり、私の「常識」から外れてたりして、展開や…

近松門左衛門

角川ソフィア文庫の『近松門左衛門』に収められているのは、 次の作品の名場面らしい。 「出世景清」 「曽根崎心中」 「用明天皇職人鑑(かがみ)」 「けいせい反魂香(はんごんこう)」 「国姓爺合戦(こくせんやかっせん)」 読み始めて、最初の「出世景清…

元禄2(1689)07.12:市振

『おくのほそ道』の「今日は親知らず・子知らず・犬戻り・駒返しなどといふ北国一の難所を越えて」で始まる文章の一句。 一つ家に遊女も寝たり萩と月 澄んだ月明かりのようで好きだ。 03.27の深川出発から、3か月と15日程。 昔、電車で親知らず・子知らずを…

おくのほそ道

3月27日(陽暦5月17日)深川を出発して、 今さっき5月5日に仙台に入ったところを読んだ。 平泉もまだ。 大垣に着くのは、9月6日(陽暦10月18日)頃のようなので、 まだまだ先は長い。 芭蕉の歩いた道を、その後そのまま辿って歩いた人っている…

百人一首

「目には見えない」思いを、「具体的な映像として、我々に示」(80)すのが歌、といった解説が、繰り返し何度か出てくる。 100首を続けて読むのは、思っていたより大変だった。やっと93首目。 100首選んだ定家やそれを書写した人、親しんできた人たちすべてに…

とりかへばや物語

今、巻三を読み始めたところ。 男として生きる女君と、女として生きる男君。 女君は妊娠。 相手の男が用意した網代車に乗って、身を隠すことになった。 檳榔毛(びろうげ)の車と網代車(あじろぐるま)の挿絵があって、わかりやすかった。 「足摺り」の挿絵…

うつほ物語

琴の名手が登場する。舞も見てみたい。 清原俊蔭が持ち帰った様々な琴の音も聞いてみたいし、彼の娘や孫にあたる仲忠のうつほ(ほら穴)での練習三昧の暮らしにも憧れる。 風や雨の音、鳥の囀りや移動、蝶の舞う姿に惹かれる。 渡り鳥のように休まずみんなで…