和泉式部日記16

和泉式部の歌に、敦道親王返歌5首。

初句が同じでも違うから、いろいろな人が読むのを聞くのは楽しい。

けれど、会えずに歌のやりとりばかりでも、辛かろうと思う。

 

秋のうちは朽ちはてぬべし ことわりの時雨にたれか袖はからまし

ー 秋のうちは朽ちけるものを 人もさはわが袖とのみ思ひけるかな

 

消えぬべき露のわが身は物のみぞ あゆふ草葉に悲しかりける

ー 消えぬべき露の命と思はずは 久しき菊にかかりやはせぬ

 

まどろまであはれいく夜になりぬらん ただ雁が音(ね)を聞くわざにして

ー まどろまで雲井の雁の音を聞くは 心づからのわざにぞありける

 

われならぬ人もさぞ見ん 長月の有明の月にしかじあはれは

ー われならぬ人も有明の空をのみ同じ心にながめけるかな

 

よそにても同じ心に有明の月をみるとやたれに問はまし

ー よそにても君ばかりこそ月見めと思ひて行きし今朝ぞくやしき