初句が同じでも違うから、いろいろな人が読むのを聞くのは楽しい。
けれど、会えずに歌のやりとりばかりでも、辛かろうと思う。
秋のうちは朽ちはてぬべし ことわりの時雨にたれか袖はからまし
ー 秋のうちは朽ちけるものを 人もさはわが袖とのみ思ひけるかな
消えぬべき露のわが身は物のみぞ あゆふ草葉に悲しかりける
ー 消えぬべき露の命と思はずは 久しき菊にかかりやはせぬ
まどろまであはれいく夜になりぬらん ただ雁が音(ね)を聞くわざにして
ー まどろまで雲井の雁の音を聞くは 心づからのわざにぞありける
われならぬ人もさぞ見ん 長月の有明の月にしかじあはれは
ー われならぬ人も有明の空をのみ同じ心にながめけるかな
よそにても同じ心に有明の月をみるとやたれに問はまし
ー よそにても君ばかりこそ月見めと思ひて行きし今朝ぞくやしき