かぐや姫と舞姫

平安時代前期、10世紀半ばまでには成立したとされる『竹取物語』のかぐや姫は、

多くの男や帝の求婚を断って、心残りを残しながらも、天の羽衣を着せられ、地上の物思いを失くして月へ帰って行く。

 

明治23年、1890年発表の『舞姫』の舞姫エリスは、

内心不安を募らせる中、豊太郎の帰国と相沢への口約束を知って正気を失い、

豊太郎は人知らぬ恨みを抱えながら帰国の途につく。

 

去って行くかぐや姫と豊太郎。

豊太郎は、

狂女となったエリスに謝ることもできない。やり直すこともできない。

 

残された帝とエリス。

かぐや姫に二度と会えないとなった今、

帝は、永遠に生きても意味がないと、不死の薬を焼いてしまう。

 

舞姫かぐや姫は随分違う話のようだが、物語の構造は案外似ているような気もした。

少しパーツを変えることで、様々な物語が生み出されていくものだ。