井伏鱒二
新潮文庫で、「山椒魚」「朽助のいる谷間」「岬の風景」「へんろう宿」「掛持ち」「シグレ島叙景」「言葉について」「寒山拾得」「夜ふけと梅の花」「女人来訪」「屋根の上のサワン」「大空の鷲」を読んだ。
「山椒魚」は、生き生きした自然の描写が好き。
「朽助のいる谷間」は、水に沈むことが残酷。
「岬の風景」は、「私の腕の輪の中で」といった表現や色が印象的。
「へんろう宿」は、高知の宿が舞台。
「掛持ち」は、二つの宿を掛け持ちする男が主人公。
「シグレ島叙景」は、兎のいる島と停泊する船をアパートがわりにしている人たちの話。
「言葉について」では、ぶっきらぼうに聞こえる方言を翻訳しながら話が進む。
「寒山拾得」の最後は、寒山先生と拾得先生の真似をしてげらげら笑って終わる。
「夜ふけと梅の花」は、約束を果たさないでいる男の気がかりと妄想。
「女人来訪」は、8年前に男のプロポーズを断った女が、にもかかわらずその男を思い、結婚したばかりの男を訪ねてくる話。少し怖い。
「屋根の上のサワン」は、怪我をしたがんを世話したが、がんはいつか行ってしまう話。
「大空の鷲」の舞台は、御坂峠や黒岳、笹子、天城山、谷津温泉など。東京の小説家や女優、男優、監督なども登場して、話にいくつかの話が入って入れ子のようになっている。