出会って別れる
『完訳版 失われた時を求めて10 第五篇 囚われの女Ⅱ』(鈴木道彦訳、集英社文庫ヘリテージシリーズ、2014第3刷)の本編を読み終えた。
表紙はキース・ヴァン・ドンゲン「アルベルチーヌとアンドレ」で、その表紙からはアルベールチーヌもアンドレもゴモラの女のような予感にさせられる。
しかし、それが真相なのか、はたまた語り手の思い過ごしだったのか、なんなのか分からないまま、アルベルチーヌはいなくなって(そして次巻では落馬して亡くなって)しまう展開。
一体何をどうすれば、語り手はアルベルチーヌを愛せるのだろうか。アルベルチーヌは名前や噂から思いを巡らせて会った人物ではなく、会ってから名前を知った人物だったような気がするが、読み損ねているだろうか。
一体、アルベルチーヌの存在は語り手にとってなんだったのか、小説の中でどんな存在なのか、とふと思わされた。出会って別れる、とはそんな感じなのだろうか。
ここまで読んでくると、登場人物を実際に感じるというか、記憶のなかに思い出すというか、そんな感じになる。
つい先を急いで読んでしまいがちだけれど、あと残すところ3冊と少し。
ここまで読めてよかった。読み通せそうになっているので少しドキドキしている。