外を歩く

『完訳版 失われた時を求めて9 第五篇 囚われの女Ⅰ』(鈴木道彦訳、集英社文庫ヘリテージシリーズ、2014第2刷)を読んでいる。

 読んでいると、物売りの呼び声の記述が思いがけなく出てきた。

 懐かしい感じ。

 長編小説を描いても、誰かが言っていた、プルーストの作品がドストエフスキーのような感じにはならない、のがなんとなくわかるような気がした。

 p322の「生きつづけようとする気持を維持したい、日常的なものよりも甘美な何かがあることを信じたい、そう願う者は外を歩いてみるべきだ。なぜなら狭い道にも大通りにも女神が満ちあふれているからだ。しかし女神は人を寄せつけない」

 p300あたり、アルベルチーヌの帰宅を待って、語り手がピアノを弾くあたりから芸術についての話も始まる。

 ベルゴットやスワンの死、語り手やアルベルチーヌ、シャルリュスやモレル・レアの嘘も語られている。